柔らかな花
街を見下ろす高台。イノセンスを使って楽々とその頂に登ったラビは、先客がいるのを見つけて小さく笑った。
彼と同じ黒の教団の団服を纏い、静かに眠る少女。年の頃はアレンの1・2歳年下程度だ。白に近い金髪はふわふわと波打って腰の下まで流れている。
足音を立てずに少女に近づいたラビは、その白い頬をチョンとつついた。
「・・・。」
優しく呼びかけると、少女の瞼が震えてゆっくりと開く。青灰色の瞳がラビを認めて柔らかく笑んだ。
答えるように笑い返してラビはの隣に寝転がる。さりげなく少女の左手を握ると、その暖かさに心から幸せそうな顔をした。
彼女に対して好きだと言ったことはない。彼女もラビにそういうことは言わない。ただ黙って寄り添ってくれるのだ。
それがどれほど嬉しいことか、とても言葉では言えそうにない。
「・・・。」
そっと壊れ物を抱くように少女を抱きしめて、ラビは目を閉じる。
降り注ぐ日差し。そよぐ風。大地の香り。
腕の中の、ぬくもり。
『ラビ』であるうちはこの全てを守りたい。側にいたい。
ブックマンとしての立ち位置など忘れて、ひたすらに願う。
高台が闇に沈むまで、少女を抱えたままラビは動かなかった。
<FIN>
柔らかな花