マフィアの嫁になる気はない?



「ね、山本。」

何か隠してるでしょ。

の勘の良さを今回ばかりは呪った。




付き合っている訳でも親友な訳でもなく、との関係は言うなら悪友。とりあえず怒られる時はいつも一緒。2人で親父の拳骨を喰らったこともしばしばで、要はそういう間柄なのだが、1つだけどうしても言えなかったことがある。

“マフィア”に関わることだ。下手したら命を落とすような世界にを関わらせる訳にはいかない。それはただ単純に彼女が心配だとかそういう理由もあったけれど、とにかく関わって欲しくないのだ。俺以外の野郎と仲良くなって欲しくないし、が傷付くのなんて耐えられない。だから言わない。言わなければなんとでも言い訳できる。

俺は単細胞な頭でそう思っていたのだけど、如何せんはそう簡単には騙されてくれなかったらしい。(当たり前か、学年トップだしな。獄寺より頭良くて皆驚いたんだ。)

放課後の教室。窓際に追いつめられた俺は、輝く笑顔の彼女を直視できずにいた。

「山本、どうなの?」

「…ナニモ、カクシテナイデス。」

「嘘。片言になってるよ。」

さぁ吐け、と更に詰め寄るこの威圧感。あぁもうホントにどうしよう。てかこいつ絶対マフィア向いてるんだよな…喧嘩強いし、頭良いし、優しいし、可愛いし…て、最後は違う。しかも意識せずにくっつきすぎだ。理性保たなくても知らないぞ。

グラグラしてきた頭を抱えて唸る俺に、何を思ったのかはいきなり胸倉を掴んで一言。

「彼女でもできたの?」

「…は?」

間抜けに聞き返す俺のシャツを掴んだまま、ひどく真剣な顔で見上げてくる彼女の目に浮かぶのは、見たこともない色。

…泣きそうに見えるのは、気のせいか?

「…て!ど、どうしたんだよ!?違うって、彼女なんかいねぇって!」

むしろお前が好きなんだよ!

叫びかけて咄嗟にこらえた俺は我ながら立派だ。

はス、と目を落とすとポツリと呟く。

「…いきなり学校休むし。」

「…うん。」

「…何か入院したりするし。」

「…うん。」

「…ツナとか隼人とよくいるようになったし。恭弥とも仲良いし。」

「…それはの方じゃねえかな…」

あの雲雀を名前で呼べるのはとディーノさん位だ。

俺のささやかな反論に、は語調を強くして続けた。

「…それにっ、何で怪我したのかも言ってくれないしっ。私だって心配したいのに、何かモヤモヤしてお見舞いに行けなかったじゃないっ。」

「え…」

「行って誰か他の子が看病してたりしたら絶対泣くから行けなかったの!」

言い切ってフイと横を向いた目には、今度ははっきりと涙が浮かんでいる。シャツを掴む手が僅かに震えていることに気付いた俺は、思わず反射でを抱きしめた。彼女は特に文句を言うこともなく、黙ってされるがままになっている。

…なぁ、

「…それはさ、自惚れてもいいのか?」

「…山本の判断に任せる。」

「好きだよ。」

だから、名前で呼んで欲しい。

何度か躊躇うように口をパクパクさせて、やっと「…武…」と呟いた彼女に、俺はそっと囁いた。




マフィアの嫁になる気はない?

(え、マフィア?)(そ。俺、マフィアになったから。黙っててゴメンな。)(……滅茶苦茶軽いね…)

〈FIN〉