澄み渡ったどこまでも青い空。長閑に飛ぶ鳥。揺れる草木。

そして、大切な人の最高の笑顔。




血盟城と眞王廟を見下ろせる高台。そこは普段から大勢の人々が訪れる観光スポットだ。

バスケット片手にのんびりと上がってきたヨザックは、後ろに付いてきている少女を振り返った。

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫…じゃ、ないかも…疲れたよー、休もうよー。」

「後少しだから根性出せって。それともおぶってやろうか、お姫様?」

意地悪く笑うヨザックに、少女−−−はムッとした顔で言い返す。

「いいよ、あたし重いもん。お気遣い傷み入ります、騎士様。」

明らかにお姫様と呼ばれたことを意識しているに、ヨザックは小さく笑ってまた前を向く。

歩き続けるヨザックに、は慌てて遅れがちだった足取りを早めたのだった。




高台のてっぺんの更に西側に下った所には、一見しただけではそうと分からない空き地のような場所がある。そこにをいざなったヨザックは、草の上にぺたんと座り込んで息をつく彼女に持ってきた紅茶を渡した。

「お疲れさん、。」

「うん、疲れたぁ。でもこんなに空気の良い所初めて!」

ニコニコと笑うに、ヨザックは笑い返してバスケットの中身を広げる。

ドリア達メイド陣が、が出掛けるのなら気合いを入れて準備しなくては!と張り切って用意していた軽食の数々を取り出して、ヨザックは渡された時に向けられた意味深な彼女達の笑いを思い出す。

陛下ご寵愛番付・通称陛下トトで、一位はぶっちぎりでヴォルフラム、二位は同じく他の追随を許さずにコンラッド、三位以降は泥沼状態でその時々によってかなり激しく変動しているのだという。そしてその泥沼の中にヨザックとも入っているのだとか。…ぶっちゃけ本人達はどうでもいいと思っているのだが。

そしてそれと同時に行われているのが姫ご寵愛番付・通称姫トトなので、恐らくはこうして2人で出掛けている自分はかなり高い位置にいるのではないだろうかと想像しているヨザックである。そちらはあえてチェックしていないから結果がどうかは知らないが。

何しろ、チェックした結果ランク外だったりしたらかなり凹むことが確実なので。

そんなことを考えてぼーっとしていたヨザックは、に肩を揺すぶられて我に返る。心配そうな表情のが黒い瞳で彼を見上げていた。

「ヨザックだいじょぶ?無理してない?せっかく休みだったのに付き合わせちゃったから、疲れてる?」

今にも頭を下げそうなに、ヨザックは慌てて首を振る。

「平気だって!ちょっと考えてただけで、こっちこそぼーっとしてて悪かったな。」

「それこそ気にしなくていいよ。…ほんとに大丈夫なんだよね?」

「あぁ、大丈夫だ。」

安心させるように頷いてみせて、ヨザックはサンドイッチを手に取る。

「腹減ったよな。食うかぁ。」

「うん。」

やっと笑顔で頷いたに、ヨザックはホッと胸を撫で下ろした。




食べ終わって一息ついた2人は、後片付けをすると草むらに横になった。が頭上に腕を掲げて楽しそうに言う。

「遠いなぁ、空。」

「空って遠いもんじゃないか?」

ヨザックの応じた言葉に、は軽く頷いてから、でも、と続ける。

「日本…地球かな?そこではもう、宇宙まで行けるのが当たり前だから。」

ヨザックが鼻を鳴らして言う。

「夢がないねぇ。」

「そうだね。…便利にはなったけど、夢はないかもしれない。見れないもの。」

見たってすぐに科学で説明がついてしまう。それ以上は妄想になってしまうから。

の言葉に、ヨザックは自分も手を掲げての手に重ねた。温もりが重なって幸せな気分になる。

「でも、ここでは妄想じゃないだろ?」

横を向くと、が花開くように笑った。

「うん。」

頭上では空が笑っていて、目の前では愛しい人が笑っている。

ヨザックは優しい目で、双黒の姫君を見たのだった。




あぁもう、本当にどうしてこんなに可愛いんだろう!

〈FIN〉




青空に咲く花