「、いるか!?」
バン、と勢いよく扉を開けて飛び込んできた見慣れた青年に、は不思議そうな顔で首を傾げた。
「うん、どうしたのヨザック…うぁ!?」
思わず声を上げるに構わず、ヨザックは彼女を抱えると問答無用でベランダに飛び出した。
「ヨ、ヨザ…!何なの一体!?」
「ごめんなー。ちょっと勘弁してちょーだいちゃん。」
ふざけた口調で言いつつも、真剣な眼差しでヨザックは扉を見ている。その迫力に気圧されて押し黙るに小さく笑いかけて、じりじりと後ずさった。
「…、ここから飛び降りるって言ったら怒っちゃう?」
「ここって…え、三階だよ!?」
「うん、知ってる。」
あくまでも真面目に頷くヨザックに、は一瞬躊躇った後ぎゅっと彼にしがみついた。
「…大丈夫!頑張る!」
「いい度胸だ。じゃあちゃんと捕まってろよ!」
ダン、と床を蹴って飛び降りた2人の背後で「逃げられたー!」という悔しそうな声が聞こえた。
「あー…疲れた…」
結局飛び降りた後もそのままを抱いて逃げ続けた(?)ヨザックは、城内にある林の奥まった所でようやく足を止めた。
半ば目を回していたが降りるのを手伝ってやって、自分もふぅと息をつく。
「いやー、悪かったな。時間が無くてさ。」
「だ、いじょうぶ…うー、気持ち悪いー…」
グラグラする頭を抱えて唸るに申し訳なそうな顔になって、ヨザックはそっとその頬に触れた。が不思議そうに顔を上げる。
「ヨザック?」
「…悪かった。」
「え!?」
目を白黒させるを抱き寄せて、照れくさそうな語調で続けた。
「…あのままあそこにいたら邪魔されそうだったから、つい反射でさらっちまったんだ。ごめんな。」
「邪魔…?しかも反射って…え、何なの?」
訳が分からないにヨザックはあぁやっぱりと苦笑する。
「…分かんないか?」
「うん、さっぱり。何があったの?」
怪訝そうなと視線を合わせて、ヨザックは笑い混じりに言った。
「俺、帰ってきたばっかりだろ?」
「うん。」
「んで、いつも帰ってくるととお茶してるよな?」
「うん。…あ、用意しっぱなしだ。」
勿体無いなぁとボヤくをハイハイと宥めて、ヨザックは言葉を続ける。
「更に、も国外視察から帰ってきたばっかだったと。…はい、この場合どうなるでしょう?」
「…皆でお茶会。」
「当たり。」
そこまで言われて、はやっと事情が飲み込めたのか吹き出した。
「ヨザック…」
「だ、だから悪かったって言ってるだろ!」
顔を赤くして背けてしまうヨザックに抱きついて、はクスクスと笑う。
要するに、2人でいられる時間を邪魔されたくなかったからその前に移動した、ということらしかった。何だか嬉しくてこそばゆい。
ヨザックの手がぐしゃぐしゃと髪をかき回すのに小さく抗議をしつつ、は笑顔を彼に向けた。
「お帰りなさい、ヨザック!」
「…ただいま、。」
笑い返したヨザックと幸せそうに抱き合う。
穏やかな木漏れ日の下、2人はのんびりと時を過ごしたのだった。
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〈オマケ〉
「…ね、飛び出して来ちゃったけど大丈夫かな?」
「あー…怒ってるかもなぁ。特に…」
言いよどむヨザックの脳裏では、笑顔でどす黒いオーラを漂わせる元上司と大賢者の顔が浮かんでいた。
〈FIN〉
愛の逃避行(仮)